パイプのけむり     團伊玖磨・全仕事 團伊玖磨全仕事 ▲中国食べ物語 ▲團家の食卓
お茶のあるくらし〜日本茶、紅茶、中国茶の楽しみ方
 「人類とお茶は長くて深いつきあい」という主旨で、茶の歴史、種類、喫飲について、熊倉功夫、古賀健蔵、荒木安正、團和子さんの四人の講演内容(東京電力株式会社「TEPCOセミナー」講演録)を忠実にリライトされたものである。
 私は、幼少、疎開した滋賀県で育ったために自家で使用するお茶は、自家で栽培し,古典的な製造方法での茶を飲んでいた。
 畳み一枚ほどのトタンの皿の上に蒸した茶葉を何時間もかかって手で揉みほぐし、皿の下からの炭火の火力で乾燥する方法をとった。若かった母の茶をもむ姿が今も目に焼きついている。そのような事情で、家で使用するほとんどの茶は、お茶屋さんから購入することはなかった。トタンの皿は、古い毛筆で書かれた和紙が隈なく貼られていてトタン板の直熱を緩和し、蒸した茶葉にほど良い熱気を与えていた。和紙は、毎年、行われる作業によって茶褐色に変色していた。
 要するに原始的な方法が手揉み茶である。今では、摘み取った茶葉は全べて専門の業者に依頼し機械で焙煎するから、香りは画一的に成り、昔のように、各家の先祖伝来の独特な茶の香りが、各家によって異なると言うようなことはなく、個性がなくなってしまった。
 新緑の葉は、蒸すと深い深緑に変化し、しんなりと炒り立ての茶葉は、暗緑になり山のような葉は針状に縮んでしまった。
 口に入れるとカリカリと香ばしくほろ苦さと甘さが口中に広がり、深い季節の味と香りが楽しめた。特に、新芽だけを炒る玉露は、口中で季節が弾けるような爽やかさと心地よさで苦味は胃の腑までも慰撫した。
 地域により茶の新芽の発生は変わるが八十八夜(2月5日)、立春から数えて八十八日目のことで、太陽暦では、5月1〜2日頃になる。この時期が、茶を摘むのに最も適した時期と言われている。文部省唱歌「茶摘」〜「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る・・・・」の歌のとおりである。要するに、5月は、夏の序章であり若い芽吹きのエネルギーが栄養豊富な各種のお茶となって味わうことが出来るのである。5月から6月に掛けての香り高い茶の季節は、食材も豊富で新しいジャガイモ(馬鈴薯)、そらまめ(蚕豆)、ラッキョウ(辣韮)、グリンピース(豌豆)、海の魚は初鰹、桜海老、しらす、きす(鱚)、穴子、虎魚(おこぜ)、皮剥(かわはぎ)、飛魚、川魚では、諸子や子鮎、岩魚、山女が旬である。
 第1章では、熊倉功夫さんが、日本茶をベースに見た世界の茶との歴史的変遷が語られ、第2章では、古賀健蔵さんが日本でのお茶に関わりのある詩歌、和歌、俳句などを引用され、文学的にどのような変遷を辿り、思想的に茶道が経済効果や政争や政略に用いられたかの前哨になる著述がなされている。
 第3章では、荒木安正さんが、世界の国々での紅茶の発祥、歴史、香りの文化を語られている。紅茶が複雑な国同士の流通問題をどのように解決し、各国が自国で生産された紅茶だけではなく他国の紅茶をどのように、どのような場合に、どのような器具や器をもちろん、日本の宗教や武家社会から発展した茶道も含めて、北欧の紅茶はもっと広範な産業や経済や政治に連結していると考えると、先ずこの本を入念に読むとこれらのことが見えてくるように思う。
 第4章では、團和子さんが、中国茶の歴史と淹れ方について書いている。本場での中国料理修行をされただけに、和子夫人には、中国茶について、食との関連、饗応の方法など詳細で心のこもった解説をされている。
 團伊玖磨さんは、「親しいからいいじゃないか」というだらしない姿勢は僕は嫌いだ。と良く、仰っていた。ご夫妻と親しくなればなるほど、僕は、このことが頭の中を去来した。僕には、世界の茶は、色々な思想や学術的な理屈があるかもしれないが、根本は、人を待遇することにあると思う。美味しいお茶を淹れることが、来客の対応に重要なことであり、饗応の基本はお茶をお客さんに出すことであるとご夫妻で語って居られたことが思い起こされる。
 出版社のこのような地道な方法での素晴らしい伝統文化の堀起こしは貴重だが、活字離れした若い世代にこのような茶に関する先人の豊穣な知識がどれだけ継承されるかが課題であろう。(早崎日出太)
 
書  名 価 格 著 者 発行所 頁数 寸  法
お茶のあるくらし   定価1,500円
(本体1429円)
熊倉功夫
古賀健蔵
荒木安正
團  和子
潟Wュリアン 205 130×190×12 
 初版:2005.12.02.    ISBN4-902584-16-6
No タイトル 頁数 参考
◆人とお茶のかかわり 熊倉功夫
01 第1章・植物としてのお茶 11-17
02 第2章・お茶の歴史 19-31
03 第3章・お茶の文化・お茶の楽しみ 33-49
◆お茶の心と日本文化 古賀健蔵
04 第1章・お茶の心と日本文化 53-64
05 第2章・お茶の心と和歌 65-79
06 第3章・「わび」と「さび」 81-89
07 第4章・お茶の世界の広がり 91-101
◆紅茶の楽しみ方〜英国紅茶文化入門編 荒木安正
10 第1章・紅茶の歴史
     〜英国紅茶文化の完成まで
105-118
11 第2章・英国紅茶の楽しみ方 119-131
12 第3章・厳しいお茶の時間の取り決め 133-147
13 第4章・紅茶を楽しむ一工夫 149-166
14 第5章・特別な紅茶の淹れ方 167-171
◆家庭で美味しい中国茶を 團  和子
15 第1章・中国茶の色々 175-184
16 第2章・中国人のお茶の楽しみ方 185-190
17 第3章・中国茶の楽しみ 191-200
紅茶 201-205